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長壁 豊隆
no journal, ,
中性子磁気散乱は物質の磁気状態を微視的に直接観測できる有力な実験手段である。しかしながら、低温高圧力下の中性子磁気散乱では、現状はピストンシリンダ式高圧力装置を用いた3GPa以下の実験がほとんどである。われわれは3GPa以上での単結晶中性子磁気回折実験を実現するためサファイアアンビル技術の開発を行ってきた。最近、圧縮強度がサファイアと同程度で抗折力や破壊靭性に優れる超硬(WC)とサファイアとを組合せたハイブリッドアンビルを採用し、液体ヘリウム温度まで冷却可能な小型セルと組合せ、最高7GPaの圧力を発生させ、実際に6.2GPaでの磁気散乱実験に成功した。また、圧力発生技術開発と平行して圧力下の単結晶回折実験に最適な圧力媒体の探索を行った結果、グリセリン媒体が7GPaにおいてもほぼ静水圧に近い圧力を伝達することを発見した。これらの技術要素を用いて、充填スクッテルダイト化合物PrFeP及び価数転移物質YbInCuについて、単結晶回折実験を行った。前者については2.4GPa以上で存在する圧力誘起絶縁相がPrあたり約2の反強磁性秩序相であることを発見し、また、後者については4GPa及び6.2GPaにおいて圧力誘起強磁性秩序を発見した。
片山 芳則; 服部 高典; 福井 宏之*; 野澤 暁史*; 舟越 賢一*
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常温常圧の液体の水は、水分子が方向性を持つ水素結合によってネットワーク構造を作るため、他の分子性液体とは違った特異な性質を示す。このような4配位構造が基本となった隙間の多い構造は、加圧によって密な構造へと変化すると期待される。われわれは前回に引き続き、より高い圧力までの構造変化を調べるため、放射光を用いたX線その場観察実験を行った。これまでのSPring-8のBL14B1に設置されたキュービックマルチアンビルプレスを用いたX線回折測定に加え、BL04B1の川井型の2段式プレスを用いることによって約17GPaまでの測定に成功した。直径1.5mmの比較的大きな試料を用いることによって、バックグラウンドの低い質の良いデータを得ることができた。常圧の構造因子S(Q)は2Aと3Aに二つの極大を持つ。圧力を加えると、これらの極大は融合し、単純な液体の構造因子に似た一つの鋭いピークになる。さらなる加圧によって、このピークはQの高い方向へと移動する。密度の増大は、数GPaまでは配位数の増大によるものだが、それ以上の圧力では、分子間距離の減少によって引き起こされることが明らかになった。
片山 芳則; 金子 洋; 服部 高典
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高圧下のX線回折実験法としては、バックグラウンドを低減でき、なおかつ短時間に測定できる方法としてエネルギー分散法が使われている。しかしこの方法では、回折強度が放射光の強度スペクトル,検出器の感度スペクトル,試料や試料周りの物質の吸収スペクトルなど、エネルギー依存性を持った幾つもの因子の影響を受ける。これらの因子を独立に評価することは難しいため、辻らは、これらの因子の影響を経験的に決め、液体やガラスの構造因子を求める方法を提案した。さらに、舟越らは、その計算をモンテカルロ法によって行うプログラムを開発した。しかしながら、この方法では、低波数のピークの高さに誤差があるなど、不安定さがあった。この方法をさらに改良して、常温常圧の石英ガラスの構造因子を安定に再現できるようになったので、報告する。
齋藤 寛之; 内海 渉; 金子 洋; 青木 勝敏
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5GPaから10GPaの圧力領域で分解温度の圧力依存性を測定し、標準生成エンタルピーと常圧での分解温度を実験的に決定した。分解温度はvan't Hoffの式から、圧力に対して単調に増加する。高圧下では分解温度は高温側にシフトし、熱活性エネルギーの大きい状態で、カイネティクスの影響の小さい実験データを得られる。高温高圧下におけるInN分解の温度圧力関係を決定するために放射光その場観察実験を行った。実験にはSPring-8 BL14B1に設置された180tonキュービック型マルチアンビルプレスを用いた。実験から得られた分解温度圧力のデータを用いて最小自乗法により標準生成エンタルピーH及び常圧での分解温度を計算した。H=-45.2kJ/molで常圧での分解温度は286Kである。この結果はOnderkaらの計算結果と一致し、InNが常温常圧で準安定状態であることを支持するものである。
大村 彩子; 町田 晃彦; 綿貫 徹; 青木 勝敏; 竹村 謙一*
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ダイヤモンドアンビルセル内で高圧合成したスカンジウム3水素化物(ScH)を用いて、室温高圧力下で赤外反射測定を行った。各圧力での構造と光学的性質の対応をつけるため、並行して放射光X線回折実験を行った。試料周りにあるタングステンガスケットの表面からの反射光量を基準として、試料表面からの反射率の圧力変化を観測した。その結果、金属状態の2水素化物はタングステンと同等の反射光量を示すが、3水素化物が形成し始めるとそれに伴って反射光量が減少し、反射率が2割程度にまで落ち込むことがわかった。しかしながら、厚さ1m程度のごく薄い試料にもかかわらず、ScHはわずかに赤外領域の光が透過するにとどまり、他の希土類金属3水素化物のように可視光領域での透過はみられなかった。最近の中性子回折実験から、ScHと他の3水素化物では、金属格子の八面体サイトを占有する水素位置が異なることが報告されている。八面体サイトの水素は希土類金属水素化物の電子状態に大きくかかわっていることが推測されており、本研究で得られたScHの赤外分光実験の結果と比較することで、水素占有位置と電子状態の関係についての知見を与えることができる。
服部 高典; 友政 雅俊*; 桧垣 卓也*; 辻 和彦*
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これまで、二元系液体の部分構造は、その重要性にもかかわらず、実験的困難から常圧下でさえよくわかっていない。液体中の化学元素の違いを区別した構造、すなわち化学的短距離秩序は、Disorder物質中の構造及びその安定性の起源を考えるうえで重要である。また、圧力を加えた場合の化学結合の変化は、その化学的短距離秩序に如実に反映されるため、それを調べることで、液体中の電子状態の変化を知ることができる。このような動機でわれわれは、高圧下における液体のX線異常散乱法の開発、及び共有結合とイオン結合が共存した液体である液体AgIへの応用を行った。その結果、世界で初めて、高圧下における液体のX線異常散乱に成功し、液体の部分構造の圧力変化を観測できた。
服部 高典; 齋藤 寛之; 金子 洋; 岡島 由佳; 青木 勝敏; 内海 渉
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一昨年、高温高圧下において単元素Zrがバルクメタリックガラス(BMG)を形成するとの報告がなされた。これは、単元素におけるBMG形成の世界初の例であり、Scientificにも実用面でも大きな反響を呼んだ。しかしながら、これらの結果は、0次元検出器であるSolid State Detector(SSD)を用いた高温高圧実験に基づくものであり、高温下での粒成長の誤認の可能性があった。われわれは、その真偽を確かめるべく、2次元検出器(IP)とX線に対して透明なc-BNアンビルを装備したマルチアンビル高温高圧発生装置を用いて、その検証を行い、昨年度の学会で報告した。その結果、過去にガラス形成が報告された温度圧力領域においても、依然として結晶であり、彼らの結果は粒成長の誤認であることを確認した。しかしながら、得られた一連の結果に対して、以下に挙げる腑に落ちない点が幾つか残された。(1)高温高圧下の結晶回折パターンにおいて、ガラス相に見られるような顕著なbaselineが見られる。(2)ある温度を超えたときに急激に粒成長が起こる。(3)その粒成長開始温度が融点に比べてずいぶん低い(融点の1/22/3の温度)。これらの結果は、過去の研究を誤った結論に導く原動力となったものであり、これらの謎を解く必要がある。今回上記の謎を解くべく、過去の文献を読み漁り、その解釈を行った。また、その解釈を裏付けるべく、粒成長後に見られるbaselineをSSD及びマルチコリメータを用いて定量的測定し、その原因を検証した。
服部 高典
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III-V化合物,II-VI化合物などの異なる2種類の元素からなる物質は、その化学結合として、共有結合性に加えイオン結合性を持つ。その成分の割合は、2種類の元素の組合せによって異なり、Phillipsのイオン性の定義でfi=0からfi=0.785の値を持っている。過去の結晶相における研究から、これらの物質は、イオン性によって異なる圧力誘起構造シークエンスを示すことが知られている。すなわち、イオン性の小さな物質は、diamond/zincblende構造beta-tin構造稠密な構造(bcc, fcc, hcp構造等)と相転移し、イオン性の大きな物質は、zincblende構造rocksalt構造斜方Cmcm構造CsCl構造と相転移する。一方、液体相においても結晶相と似た局所構造が実現されることが予想されるため、その圧力誘起構造変化もイオン性の影響を受けることが期待される。本研究の目的は、その影響を調べ、結晶相における振る舞いとの違いを明らかにすることである。本講演では、これまでの実験から得られた結果を元に、イオン性の及ぼす液体の圧力誘起構造変化への影響を解説する。
立岩 尚之; 芳賀 芳範; 松田 達磨; 山本 悦嗣; 池田 修悟; 大貫 惇睦*
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私達のグループではAuFe系熱電対を用いた高圧下比熱測定による圧力誘起超伝導の研究を行っている。本講演では実験手法の紹介と圧力誘起超伝導物質UIrの研究結果について報告する。UIrは常圧でキュリー温度46Kの強磁性物質である。過去の高圧下磁化・電気抵抗測定から加圧とともに転移温度は減少し複数の強磁性相(FM1,2,3)の存在が報告されている。Fm3の臨界圧力の2.6GPa近傍で圧力誘起超伝導の存在が発見された。本研究では高圧下比熱測定を通してFm1,2,3の熱力学的相線を決定した。UIrの高圧相の電子状態の特異性等を議論する。
綿貫 徹; 町田 晃彦; 青木 勝敏; 大村 彩子*; 佐藤 卓*; Tsai, A. P.*
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準結晶は、規則的配列でありながら結晶のような周期性を持たないという準周期格子で構成された物質である。この特異な構造がもたらす物理的性質の理解には相転移現象の研究が重要となる。しかし、その事例は僅少であり、新たな相転移事例の発見が望まれている。そのような状況で、今回われわれは、Cd-Yb合金系正二十面体型準結晶において、低温高圧下で準結晶格子点上に配列する4面体型Cd原子団の向きが特定方向に揃うことを示す結果を放射光X線回折実験によって得た。この配向秩序化相転移を示す結果は、われわれが先立って行った低温高圧下におけるCd-Yb合金系近似結晶の配向秩序に関する研究成果をもとに予測をたて、見いだしたものである。
町田 晃彦; 大村 彩子*; 綿貫 徹; 青木 勝敏; 竹村 謙一*
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イットリウム三水素化物YHはイットリウムがhexagonal格子を組み、水素は金属格子間に位置している。YHは高圧力下で構造相転移を起し、イットリウム原子はfcc格子となるが、このとき低圧相のhexagonal格子から高圧相のfcc格子に至るまでおよそ10GPaの広い圧力範囲に渡る中間領域が存在する。この中間領域に関しては、低圧相と高圧相の二相共存状態であると考えられていたが、最近のわれわれの研究によって単純な二相共存状態ではないことを示唆する結果が示された。そこで本研究ではYH(x3)において高圧下放射光X線回折実験を行いイットリウム格子のhexagonal構造からfcc構造への変化の過程を詳細に調べた。その結果、この中間領域の構造モデルが得られたので、この構造について議論する。
町田 晃彦; 大村 彩子*; 綿貫 徹; 青木 勝敏; 竹村 謙一*
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Y, Hoなどイオン半径の小さい希土類金属の3水素化物は金属格子がhexagonal格子を組んでおり、高圧化で金属格子がfcc格子に変化することがこれまでに確かめられている。一方でイオン半径の大きいLaなどの水素化物では金属格子はfcc格子である。これまでわれわれがLaHについて行った研究では、21GPaまでは金属格子はfcc構造のままで構造相転移は観測されていない。そこで、本研究ではLaHの高圧下X線回折実験を行い、高圧構造を詳細に調べ、金属格子がfcc構造から変化するか確かめた。加圧をすると16GPaまでは回折パターンに大きな変化は観測されず、金属格子はfcc構造のままであることが確かめられた。しかしながらさらに加圧すると、徐々に200, 311反射が顕著にブロードになり、また220反射の低角側などに新たな回折ピークが出現する。このようにLaHは高圧力下で構造相転移を起こすことが示された。この構造相転移について議論する。
町田 晃彦; 大村 彩子*; 青木 勝敏
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ダイヤモンドアンビルセル(DAC)中へのガスの充填方法は、(1)室温で高圧ガスを充填する,(2)低温で液化したガスを充填するという2つの方法がおもに行われている。低温で液化する方法は、低温に到達するまでの時間がかかるなどの問題点があるが、装置全体をコンパクトにできる、クライオスタットに試料観察用の光学窓を取り付けることで、試料の状態を観察しながら充填できるという利点もある。われわれは液体水素をDAC中へ充填するために、水素の液化温度(約20K)以下への到達時間を短縮し、また試料部の観察,測圧が可能な充填システムの開発を行っている。この装置開発の現状について報告する。
根元 和明*; 平山 朋子*; 松岡 敬*; 服部 高典
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車の動力伝達に使用されるCVT(トラクションドライブ式)変速機において、高温高圧高シア下におかれている機械潤滑油の微視的状態を調べることは、より効率のよい潤滑油を開発するうえで必要不可欠である。しかしながら、そのような条件下での、油の微視的構造(固体か、非晶質なのかさえ)はほとんどわかっていない。本研究では、その手始めとして比較的簡単な分子構造を持つ2種類の油(n-hexane, Dicyclohexyl)に対して、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧下光学顕微鏡観察及び、マルチアンビルプレス(MAP)高圧発生装置を用いた放射光X線回折を行い、高圧下における油の相転移挙動を調べた。DACを用いた光学顕微鏡観察では、これまで報告されていた固化圧(数万気圧)よりもずいぶん低い圧力(数千気圧以下)で固化が始まることがわかった。また、MAPを用いた放射光X線回折から、固化した物質は、これまで信じられてきた非晶質状態でなく、結晶状態であることがわかった。これらのことは、これまでマクロな挙動から推測されてきた油の高圧状態を覆すものであり、微視的な視点に立った研究が油の機械特性を理解するうえで重要かつ有力であることを示すものである。